不安障害の主な種類

一口に不安障害といっても、その現れ方は様々です。DSM-5では、不安の対象や状況によっていくつかの疾患に分類されています。ここでは代表的なものをご紹介します。

パニック障害

何の前触れもなく、突然、激しい動悸、息苦しさ、めまい、吐き気、死の恐怖といった「パニック発作」に襲われる病気です。発作自体は10分程度でピークに達し、通常は30分以内に収まりますが、その恐怖は強烈です。

パニック障害のつらさは、発作そのものに加え、「またあの発作が起きたらどうしよう」という強い不安(予期不安)や、「発作が起きたら逃げられない場所」を避ける行動(広場恐怖)にあります。これにより、電車やバス、人混みなどを避けるようになり、生活範囲が著しく制限されてしまうことがあります。

社交不安障害 (SAD)

他者から注目される社会的状況に対して、著しい恐怖や不安を感じる病気です。「人前で恥ずかしい思いをするのではないか」「おかしな人だと思われるのではないか」というネガティブな評価を過度に恐れます。

具体的には、スピーチや会議での発言、電話応対、人前での食事といった場面で、赤面、動悸、声の震え、発汗などの身体症状が現れ、そうした状況を避けようとします。単なる「あがり症」や「恥ずかしがり屋」とは異なり、その苦痛や回避行動が社会生活や職業上の機能に大きな支障をきたします。

全般性不安障害 (GAD)

仕事、健康、家庭、経済状況など、日常生活における様々な出来事に対して、コントロールできない過剰で漠然とした不安や心配が、長期にわたって(少なくとも6ヶ月以上)続く状態です。

常に何かを心配しているため、心身がリラックスできず、落ち着きのなさ、疲労感、集中困難、筋肉の緊張、不眠といった症状を伴います。心配事が一つ解決しても、また次の心配事を見つけてしまう「心配性」とは一線を画す、治療が必要な病気です。

その他の不安障害

  • 広場恐怖症:公共交通機関、広い場所(駐車場など)、囲まれた場所(店、劇場など)、行列や人混みの中にいること、家の外に一人でいること、といった状況のうち2つ以上を恐れ、避ける状態です。
  • 分離不安障害:親しい人(愛着の対象)から離れることに、その年齢や発達水準から予測される以上の強い不安を感じます。子どもだけでなく、成人でも見られることがあります。

不安障害の治療

不安障害の治療では、薬物療法と精神療法(心理療法)を組み合わせることが効果的です。

1. 薬物療法

主にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬が用いられます。不安感を和らげ、心身の緊張をほぐす効果が期待できます。効果が現れるまでには数週間かかるため、医師の指示通りに服薬を続けることが大切です。必要に応じて、即効性のある抗不安薬を一時的に併用することもあります。

2. 精神療法(カウンセリング)

特に認知行動療法(CBT)が有効とされています。不安を引き起こす原因となっている、ものの受け取り方や考え方の癖(認知のゆがみ)に気づき、それをより現実的でバランスの取れたものに変えていく練習をします。また、不安な状況に少しずつ挑戦していく「曝露(ばくろ)療法」も行われます。