〒195-0053 町田市能ヶ谷1-5-8
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こころの健康
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こころの健康
長く続く痛みについて(その1)
職場のストレスとこころの健康
ライフサイクルからみた中高年のこころの危機
「脚がむずむずして眠れない…」方へ
長く続く痛みについて(その2)
うつ病と痛みについて
高齢者のうつ病
高齢者の不眠症
強迫性障害について
思春期の不安とその特徴
うつ病に伴う不眠について
長く続く痛みについて(その1)
いたみは日常の臨床において、もっとも頻度の高い訴えのひとつです。特に心療内科や精神科では”からだのいたみ”から”こころのいたみ”まで幅広くいたみを理解しなくてはなりません。
いたみが長期化する場合、いたみの原因として考えられるからだの病変が存在しなかったり、原因疾患が治癒しているにもかかわらず、神経生理学的には説明のつかないいたみだけが持続するときに、一般に「慢性疼痛」と呼んでいます。部位は頭痛、顎関節痛、舌痛、胸痛、腹痛、腰痛などさまざまです。医学診断では「疼痛性障害(DSM‐Ⅳ)」「持続性身体表現性疼痛障害(ICD-10)」に分類され、その症状背景にさまざまな心理社会的要因があることに留意しなければなりません。
いたみとはあくまで個人的で主観的な知覚体験であり、その反応はいたみが発生したときの原因や状況、あるいは個人の性格などが影響すると考えられます。とはいっても本人にとっては日頃耐え難い苦痛(いたみ)を抱えながら生活していることには変わりなく、いわばいたみが生活そのものになってしまっているといっても過言ではないでしょう。
臨床では根気のいる治療になることが少なくありません。いたみを根治させるという治療モデルとは別に、今ある症状がしばらく続くことを前提に、「痛いからできない」「どうにもならない」という否定的な考え方から「痛くてもできることがある、痛くても生活を楽しめることだってある」「なんとかなりそう」といった肯定的な考え方に変えていくことなど、いたみを抱えながらどのようにいたみを自己管理し、どのように生活のあり方を改善していくかという視点で、本人が積極的にいたみに適応していける方法を治療者といっしょに考えていくことがポイントになるでしょう。
職場のストレスとこころの健康
仕事に生きがいを感じながら充実した毎日を送れたらどんなに素晴らしいことでしょう。ところが、昨今は仕事や職場に強い不安、恐怖、悩みなどストレスを感じている労働者が年々増えているといわれます。その最悪の結果として、平成10年以降毎年3万人以上の自殺者が続き、なかでも働き盛りの30代から50代の増加が目立っています。仕事に追われ睡眠時間の短縮を余儀なくされ、心身の疲労が積み重なる毎日が続くと、仕事の課題が消化しきれず、達成感を得ることもなく不全感だけが残ります。ついには無力感や挫折感に打ちのめされ、こころとからだのバランスを失います。また職場では、人間関係のトラブルやコミュニケーションの希薄化、孤独化なども多く、このようなさまざまなストレスは、うつ病、適応障害、不安障害(パニック発作)、睡眠障害、心身症、摂食障害、アルコール依存などさまざまなこころの病気を誘発します。
職場のストレスから生じる代表的なこころの病気にうつ病があります。うつ病の初期症状は疲れ易さやだるさ、不眠、食欲不振、突然の不安や過呼吸発作、神経過敏、あるいは原因不明のからだの不調などが続くことも少なくなく、必ずしもうつ病の特徴的な症状が初期からあらわれるとは限りません。
仕事上でミスが多くなった、作業能率や集中力、判断力が低下した、興味関心が無くなったなど、いつもの自分と明らかに違うと自覚したら、職場の産業医や健康管理部門の担当者、あるいは近くの心療内科、精神科へ気軽に相談してみましょう。早期の対処がこころの健康を早期に回復させるキーポイントです。
ストレスのない仕事などありません。ストレスにいかに対処していくかが大切です。たとえば日頃からストレス解消のために、趣味や旅行など気分転換をはかってみてはいかがでしょうか。時間的に少しでもゆとりをもった働き方を心がけましょう。
ライフサイクルからみた中高年のこころの危機
こころの病気を診るとき、ときにライフサイクル(人生の周期と発達課題)の視点から理解する必要があります。この課題につまずき危機に直面している結果、さまざまな症状を呈している患者さまがいます。ライフサイクルにおける発達課題は、個人単独で達成できるものばかりではありません。親子や夫婦の関係、あるいは知人や職場の人間関係など、個人と家庭社会の相互関係に適応していくことで発達が促されることが多々あります。
「人生80年」の長寿社会を迎え、社会の価値観の変化とともにライフサイクルにも変化が起こっています。40歳から65歳くらいまでの間を中高年世代(中年期から初老期)と呼んでいますが、私も50歳の坂を越え、青年期に選んだ自分の生き方やつくりあげた価値観などを改めて問い直さざるを得ない心境になっています。おそらく「人生まだ何年…」から「人生あと何年…」といった人生の先が見えてくる時期にきたのでしょうか。
自分のことはさておき、この時期は健康診断で徐々に異常が指摘されはじめ、実際に高血圧症や糖尿病、がんが発病するなど、老いや死が身近なものになってきます。健康志向は不安と表裏一体となり、身体の衰えへの不安を意識せざるを得なくなってきます。それはしばしば近親者の病気や死がきっかけになることもあります。これに加えて、女性では婦人科疾患のほか、閉経など更年期の心身の不調が同様の問題となってきます。
この時期の発達課題は、病気になることや老いることを上手に受け入れ適応していくことだけに限りません。たとえば、子どもが成長し自立していく過程で夫婦のあり方が改めて問われてきます。また、男性は社会的に自分の人生の限界や定年、退職後の不安がみえてきますし、女性は自分の人生設計や夫婦のあり方、ときには夫の選択や自分の家庭・社会における存在意識に疑問を抱き、一個の女性としての生き方を改めて見直す女性たちも増えています。生活上のちょっとした破たんの危機がきっかけで、それまで潜在していた家族への葛藤が、しばしば仮面うつ病やうつ病の身体化、不安障害あるいは妄想反応としてあらわれることがあります。 このようにこれまでの人生設計の修正を迫られ、またさまざまなものが失われていく現実を如何に考え、受け容れ、乗り越えていくことができるのかが、その後のこころの安定と成熟につながっていくといわれています。
「脚がむずむずして眠れない…」方へ
不眠で悩んでいる患者さまの中に、「寝ようとすると膝から下がむずむずして眠れない」と説明されることがあります。よくお聞きしてみると、就床後に下肢が「むずむず」「ぴくぴく」「痒いような」といった異常な感覚が起こり、脚を動かさずにはいられなくなる現象が共通しています。ご本人の感覚では、下肢の奥(深部)で”虫が這うようなむずむず感”があり、脚を動かしたり歩いたりすると程度が軽快します。このような症状を『むずむず脚症候群(restless legs syndrome)』といい、睡眠に関連する疾患の一つです。
頻度は成人人口の1~5%程度で加齢とともに増加し、女性に多いといわれています。上記の症状のために睡眠が分断され、結局寝不足による疲労感と日中の過剰睡眠をきたしやすくなります。原因はよくわかっていませんが、妊娠や鉄欠乏性貧血、腎機能低下(透析治療をされている方など)などに合併することがあります。
このような症状がある方は、心療内科、精神科、神経内科などの睡眠に関連する診療科に相談してみてください。 薬物治療が奏功することが少なくありません。
長く続く痛みについて(その2)
以前から精神医学の世界では、長く続く痛みの原因の一つにこころの状態が関与しているのではないかと考えられてきました。最近では慢性疼痛の発症や経過に、心理的要因が深く関与していることに関心が向けられています。
そもそも痛みとは厄介なもので、痛みを客観的に計測したり評価することはなかなか難しいことはおわかりだと思います。骨折や抜歯、胃潰瘍などの痛みは、体験したことがなくても誰もがある程度想像し了解できますが、はっきりとした原因が見つからず慢性的に続くもののなかには、心理的に修飾された痛みが少なくなく、いわゆる個人的な体験としての主観的な痛みもあるのです。
不安、恐怖、悲しみ、落胆、怒りなどの心理的な状態は日常誰しも経験していることですが、、たとえば人間関係のなかで感情のもつれや癒し難い葛藤が解消することなくこころのなかに抱え続けてしまう場合など、身体のどこかに痛みとして長く続いていくことがあります。
原因がはっきりしない慢性疼痛の治療は心身両面からのアプローチが必要かもしれません。痛みに対する対症療法的な治療を続けてもなかなか痛みが軽減されない方は心理的な要因にも目を向けてみましょう。
うつ病と痛みについて
うつ病の患者さまが頭痛や腰痛をなどの痛みに悩んでいることは少なくありません。日常の診療では、うつ病の主症状である抑うつ気分や意欲の低下などの精神症状を訴えるより、むしろ身体的な痛みや不快感を訴える方が多いといわれています。「長く続く痛みについて」の項で痛みと心理的要因との関連をについて述べてきましたが、近年うつ病と痛みに関する生物学的研究が進むにつれて、うつ病に伴う痛みはうつ病を引き起こす生物学的な機能異常が、同時に痛みも引き起こしている可能性が示唆されています。(セロトニンとノルアドレナリン神経系の痛みを抑制する作用機序)
うつ状態が改善されれば痛みも同時に消退するといった単純な回復過程ではなく、痛みによる日常生活への障害が大きいとうつ病の回復をさらに妨げる要因にもなりかねないのです。うつ病からの回復を目指すには、痛みの改善にも注目し配慮していくことが大切になります。つまり、痛みとうつ病の悪循環を断ち切ることが大切です。
現在抗うつ薬の中で痛みを抑制する作用を併せもつ薬もあります。「長く続く痛みについて」の項で触れていますが、うつ病に伴う痛みも薬物療法だけにとどまらず、社会心理的要因に対しても同時にアプローチしていくことが肝要であることは言うまでもありません。
高齢者のうつ病
女性のうつ病の生涯発病率は男性に比べて二倍近く多いといわれています。特に高齢者(60~70歳代)のうつ病は、女性が大きな割合を占めるのが特徴です。一般に、老年期は身体機能や認知機能の低下などの老化現象に加え、配偶者との死別、重篤な疾病罹患など、さまざまな喪失体験の増加が発症要因として挙げられます。
ここで注意したいのが高齢者のうつ症状の特徴です。若年者に比べてうつ病に典型的な悲しみや気分の落ち込みのような悲哀感情が前面にでることは比較的少なく、むしろ不安、焦燥感や身体的な不定愁訴が目立ちます。また、思考の制止や不眠の影響で注意力の低下が起こりやすく、一見初期のアルツハイマー型認知症のような症状を呈することがあるため、高齢者のうつ病診断が遅れることが少なくありません。高齢者のうつ病は将来的に認知症発症への危険性も高いことが指摘されていますので、早期の診断や治療介入が重要な役割を果たすことになります。具体的には、抑うつ気分や不眠などのうつ症状の評価だけでなく、認知機能検査や画像検査による総合的で継続的な評価が大切になります。
高齢者の不眠症
ヒトは加齢による脳機能の変化に伴い、睡眠時間が減少していきます。なかでも30~40歳代以降、加齢とともに深い眠りの時間帯が短縮していきます。日常の臨床でも精神的には比較的安定していても、不眠を訴え来院される高齢者の方は少なくありません。
特段不眠になる精神的・身体的原因がないにもかかわらず慢性的に不眠が持続する、いわゆる原発性不眠症といわれるタイプです。高齢者では”寝つきの悪い不眠”が多く、女性の方が男性より2倍以上多いといわれています。この高齢者の不眠の背景には、不眠に対する過剰な不安の存在や日中のこころや体の活動性の低下などが要因として考えられています。しかし、高齢者の不眠にもその原因となる身体疾患や睡眠時無呼吸症候群、あるいはうつ病などの精神疾患によるものなど、さまざまな不眠をもたらす原因疾患が存在することにも注意しなければなりません。
まずは日常生活の内容を再点検してみましょう。
・起床時間は毎日同じ時刻に決めていますか?
・起床直後には日光に当たるようにこころがけていますか?
・規則正しい三度の食事と適度な運動をしていますか?
・昼寝をとり過ぎていませんか?
不眠そのものを怖がることはありません。不眠は数日続いても大きな体調不良や病気にはつながりません。いずれにしても、あまり神経質にならないことが肝要です。
強迫性障害について
日常、ある特定の物や事柄に対する不安や恐怖心から、何度手を洗ったり、確認したり、数を数えるなどの行為を繰り返さざるを得ない観念に悩むことを強迫症状といいます。このような行為や観念は、本人にとって不合理で無意味であることは十分わかっていても、やらないとその場の不安が解消されないため、簡単には止めることができません。その都度安心し解消するための本人なりの考えや行為のルール(こだわりの症状)がつくられますが、家族に対してもそのルールに合わせることを強要してしまい(巻き込み行為)、その結果家族は疲れ切ってしまうことも多々あります。つまり、強迫症状は日常生活や社会生活にかなりの支障をきたす症状でもあるのです。
従来、強迫性障害は心因性の疾患と考えられてきましたが、現在では中枢神経系の調節障害が想定されています。ただし、発症の契機としては競争社会状況の中での挫折や、特に女性の場合、結婚、妊娠、出産、育児などが契機になることがよくあります。また、本疾患はうつ病や不安障害を合併、併存する場合も少なくありません。
治療は心理教育、薬物治療、精神療法、認知行動療法等がありますが、まず本人や家族が症状を客観的に理解するための心理教育を受け、治療に取り組める環境を整えていくことが大切です。
思春期の不安とその特徴
思春期は心身ともに急速な成長をみる時期です。しかしこの頃は、自分自身こころの成長にどのような変化が起こっているのか比較的無自覚のまま成人になっていきます。不安をありのままに冷静に自覚することができにくいのも思春期の特徴です。
日常の臨床においても、大人のように不安そのものを訴える子どもは少なく、めまいや動悸、腹痛、過呼吸発作、頻尿など、身体的症状として訴えるケースが圧倒的に多いのです。診察の中で生活の背景に目を向けていくと、子どもは大きな不安を抱えている事実がみえてきますが、当の本人は苦しみの要因になっている不安の存在を意識の辺縁に遠ざけていることがほとんどです。まだまだ自ら不安に直面していくだけの強さはありません。。
現実の不安に目を向け、それを少しずつ自ら抱えることができるようになってきたときに解決の方向へと自分の足で進み始め、やがて症状から解放されるようになっていきます。それためには子供の不安を理解し、しっかりと支えていく身近な大人の存在が必要です。
うつ病に伴う不眠について
不眠はうつ病の初期症状として、その約80%は不眠を伴っているといわれています。また、うつ病の期間を通して、不眠はほとんどのケースに認められるといってもよいでしょう。不眠はうつ病の発病や再発に先行することが多いため、不眠に対する治療だけをおこなってもなかなか奏効しないときには、うつ病が隠れていることを疑う必要があります。また、気分や意欲が改善されても不眠が残っている場合には、うつ病の残遺症状の可能性がありますので注意が必要です。
したがって、うつ病に伴う不眠症状はしっかり改善することが必要ですが、もちろん薬物療法だけに頼らず、同時に生活習慣や睡眠習慣の改善も大切です。