どんな病気か
不眠症とは、寝つきが悪い(入眠障害)、眠っても途中で目が覚める(中途覚醒)、朝早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)、眠りが浅く熟睡感がない(熟眠障害)といった睡眠の問題が1ヶ月以上続き、日中の活動に支障が出ている状態を指します。日本人の約5人に1人が睡眠に関する悩みを抱えていると言われ、特に高齢者や女性に多い傾向があります。
症状 (タイプ)
不眠症は主に以下の4つのタイプに分けられます。これらは単独で現れることも、複数重なって現れることもあります。
- 入眠障害:寝床に入ってから寝付くまでに時間がかかる(目安として30分~1時間以上)。考えごとをしてしまったり、不安になったりして眠れないことが多いです。
- 中途覚醒:いったん寝付いても、夜中に何度も目が覚めてしまい、その後なかなか寝付けない。
- 早朝覚醒:予定した起床時刻より2時間以上も早く目が覚めてしまい、まだ眠りたいのに眠れない。高齢者に比較的多く見られます。
- 熟眠障害:睡眠時間は十分とれているはずなのに、眠りが浅く、ぐっすり眠った感じ(熟睡感)が得られない。
これらの夜間の症状に加え、日中に以下のような不調が現れることも不眠症の特徴です。
- 眠気、だるさ、倦怠感
- 集中力や記憶力の低下
- 意欲の低下
- 気分の落ち込み、イライラ感
原因
不眠症の原因は様々で、複数の要因が絡み合っていることも少なくありません。
- 心理的な原因:仕事や家庭での悩み、人間関係のストレス、緊張、不安、抑うつ気分など。
- 身体的な原因:体の病気に伴う痛みやかゆみ、咳、頻尿、呼吸困難など。睡眠時無呼吸症候群も原因となります。
- 精神医学的な原因:うつ病や不安障害などの精神疾患の症状の一つとして不眠が現れることがあります。
- 薬理学的な原因:服用している薬(ステロイド、降圧剤、気管支拡張薬など)の副作用。また、カフェイン、アルコール、ニコチンなどの嗜好品も睡眠に影響します。
- 生理学的な原因:生活リズムの乱れ(交代勤務、時差ぼけなど)、加齢による睡眠パターンの変化。
- 環境的な原因:寝室の騒音、光、暑さ・寒さ、寝具が合わないなど。
原因が特定できない「原発性不眠症」もあります。
治療法(当院でできること)
不眠症の治療では、まず原因を特定することが重要です。当院では、丁寧な問診により原因を探り、患者さまに合った治療法をご提案します。
1. 睡眠衛生指導
良い睡眠を得るための環境や生活習慣についてのアドバイスを行います。具体的には、寝室環境の整え方、適切な就寝・起床時刻の設定、日中の過ごし方、食事や運動の注意点などをお伝えします。(詳しくは下記の「セルフケア」もご参照ください)
2. 精神療法・カウンセリング
不眠の原因となっているストレスや悩み、睡眠に対する過剰なこだわりや不安などに対して、精神療法やカウンセリングが有効な場合があります。特に、不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)は効果的な治療法として推奨されています。当院でも、必要に応じて心理カウンセリング(臨床心理士)と連携して対応します。
3. 薬物療法
睡眠衛生指導や精神療法で改善が見られない場合や、症状が重い場合には、医師の判断のもとで睡眠薬の使用を検討します。睡眠薬には様々な種類があり、作用時間や特徴が異なります。患者さまの状態に合わせて適切な薬を選択し、必要最小限の量と期間で使用することを原則とします。依存性や副作用のリスクもあるため、必ず医師の指示に従って服用し、自己判断で量を変えたり中断したりしないでください。減薬や中止についても医師と相談しながら進めます。
4. 原因疾患の治療
うつ病や不安障害、身体疾患など、不眠の原因となっている病気がある場合は、その治療を優先的に行います。
セルフケア(睡眠衛生のポイント)
良い睡眠のためには、日頃の生活習慣を見直すことが大切です。以下の点を心がけてみましょう。
- 決まった時間に寝起きする:休日でも平日と同じ時間に起きるようにし、体内時計のリズムを整えましょう。
- 太陽の光を浴びる:朝起きたら日光を浴びることで、体内時計がリセットされやすくなります。
- 適度な運動:日中に軽い有酸素運動(散歩など)を行うと、寝つきが良くなることがあります。ただし、寝る直前の激しい運動は避けましょう。
- 昼寝は短く:昼寝をする場合は、午後3時までに20~30分程度にとどめましょう。
- 寝る前の刺激物を避ける:就寝前のカフェイン、ニコチン、アルコールは睡眠の質を低下させます。
- 快適な寝室環境:静かで暗く、適切な温度・湿度の寝室を保ちましょう。自分に合った寝具を選ぶことも大切です。
- 寝る前のリラックス:ぬるめのお風呂に入る、軽い読書をする、穏やかな音楽を聴くなど、リラックスできる習慣を見つけましょう。寝る前のスマートフォンやパソコンの使用は光の刺激で寝つきを悪くするため控えましょう。
- 睡眠時間にこだわらない:「○時間眠らなければ」と考えすぎると、かえってプレッシャーになり眠れなくなることがあります。
- 眠くなってから寝床へ:眠くないのに無理に寝ようとせず、眠気を感じてから寝床に入るようにしましょう。寝床で長く過ごしすぎないこともポイントです。